小松優美『13歳のアメリカ滞在記』


【まえがきより】
  「海外へ行く、というのは羨ましがられることかもしれませんが、当時の私は中学校生活に
ようやく慣れてきたばかり。それに加え、海外といえば「危険」というイメージしかなく、異国での
生活など中学生の私にはとても考えられませんでした。・・・
 言葉も通じず、右も左もわからない異国の地で、日本を恋しく思いながらも私は数多くの
貴重な経験をしました。
 当時、日々の驚き、苦労、感動、様々な思いを、私は1年間毎日欠かさず日記という形で
書き留めていました。そうすることによって、日々自分を励まし次の日に向かっていたのかも
しれません。・・・
 読み返してみれば、この日記は笑いあり涙ありの物語になりました。しかしこれは10年前の
自分が体験した、13歳の女の子の目から見た異国の土地での生活の真実そのものなのです。
 この度、自分の中で宝としてしまってきたこの日記が、自分がそうさせられたように誰かを
励ませたら、誰かを楽しませられたら、と思い、、あれから10年を機に日記の出版化を決意
しました。」



【9月3日】初登校
 「今日はついに学校へ行く日。朝 5:30に起きた。・・・・
  女の子が話しかけてきたんだけど何を言ってるかぜんぜんわからなかった。
でもその女の子は、先生が私に話しかけた時、私は英語が話せないってことを
言ってくれたし、住所や電話番号、年、誕生日などを書かなければいけなかっ
た時わかんなくて困っていたら、私の持っていた誕生日や時間割の書いてある
紙を見て書き方を教えてくれた。それとそれでもわからないところは書いてくれ
た。とってもうれしかった。
  ・・・その次はティーンリビングで、その先生は私が英語しゃべれないこと知ら
ないらしくどんどん授業すすめるし、ひじょ〜〜にこまった。そして、時間がたつ
のを待った。その時間が終わったときほどうれしいものはなかった。
  明日も学校だと思うと死にたくはならないけど、どん底におちた気分になる。
あーなぜ私が学校なんかに・・・。」

                   


【9月6日】友達
  「そのとき、いきなりあの女の子が風船をさして「バルーン」というからなにかと
思っていたら、ずっと風船をさして「バルーン」と何回もくりかえしてくれた。私は
やっと英語を教えてくれているのだとわかった。その子は私に英語を教えてくれた。
いろんなものをさしながら「ウォーター」とか。・・・ティーンリビングの時間が終わって
みんなが帰ったあともずっと残っていろんな英語を教えてくれた。・・・・・・ちょうど
消火器の英語を教えてくれているとき本当に窓のそとで火事がおこっていて真っ黒
な煙がみえた。女の子もとてもびっくりしていた。でもその煙をさしながらも「ファイヤ
ースモーク」と教えてくれた。その後、「ありがとう」って言って女の子とバイバイした
けど、また外に出てからも砂とか、あと手の指、足、くつなどを1つずつ説明してくれ
た。とってもとってもうれしかった。」



【9月13日】盗難
 「・・・帰ってバッグをあけておどろいた。弁当と水筒がない。やっぱり体育のとき
盗まれたんだ。でももうおそかった。
 今日はほとんどお弁当を残してた。しかもごはんなんか一口も食べずに・・・・。
中身の入ったままの弁当箱。そしてつつんであったバンダナ。水筒、お箸のケース
ごとすべてが盗まれてしまった。1人だけバッグをおきっぱなしにしといて盗まれる
かもってことは少しくらいは考えていたけど、この前大丈夫だったし、時間もないし、
中学校に悪い人なんて・・・。って思って軽くおいといたのに・・・。アメリカはどこでも
ゆだんするひまはないってことがわかった。」 



【11月28日】望郷
 「・・・その森を少し走ると海が見えてきた。それからずっと海沿いに走っていった。
海はとてもきれいだった。真っ青な海がず〜っと広がっていてぜんぶ海で白い波も
きれいで向こうに何もなくただ海が広がっていて水平線が見えた。海の波は荒くて
岩にあたってくるんとはねかえる波はよく絵に出てきそうだった。途中で1度車から
おりて海を見た。もうすごいきれいな海でずーっとむこうの水平線まで見えて地球が
丸くなければむこうに日本が見えそうだった。本当に日本が見えそうだったのに。」


12月5日】料理
 「その後のティーンリビングはメキシコの料理をつくった。・・・・・その後それを
食べたんだけど、イタリアンドレッシングとかメキシコのサワークリームをかけたい
人はかけるんだけどそれでおどろくのは、日本だと給食とか食器がからになるまで
終わりにしちゃいけないと決まりを作る先生までいるというのに、こっちはボール
1杯料理を作って半分くらいだれも口をつけずにあまったものをすぐ捨てるし
ドレッシングもあまったものをすぐ捨てる。ちょっとびっくりした。」


【12月19日】不衛生&不器用
 「次のLunchはピザポケットを食べたんだけど、今まで知らなかったんだけどその
ピザポケットのゴミとかを戻すと10¢戻してくれるらしく、ゴミを集めている男の子が
いてその子にごみをあげた。次のティーンリビングはクッキー作りだった。私はとくに
何もしなかったけど、アメリカ人は大胆と言うのかきたないというかわからないけど
テーブルの上にそのまま小麦粉をしいてそのままま上に生地を乗せてこねちゃうし、
型をとってフライパン返しですくうときもぼろぼろ落とすしクッキーの上にカラーの
砂糖をふりかけるときもかけた5倍くらいこぼすし・・・・。なんか本当に折り紙とか
こまかい作業ができないわけだと思った。」



【12月20 日】クリスマスプレゼント
 「今日は学校最後だからみんなにあげるクリスマスプレゼントを午前あげる人と
午後あげる人とわけて持っててもなんかすごい荷物だった。次のドラフティングは
最後の日だというのに普通に授業をした。終わって帰るとき先生が『ハブアグッド
ウィーク!』と言ってちょうど手をふりながら私の方に来てくれたのでそのとき
プレゼントを渡したらすごくよろこんでくれた。よかった!・・・・
 その後P.Eが終わって、私はP.Eの先生1番やさしくて大好きだからどうしても
プレゼント渡したくて・・・・・・それで先生のところへ行ってプレゼントを渡したら
先生が「ちょっと待って」と言ってプレゼントをあけて中を見て、私の作った折り紙の
はこを見てすごくおどろいて他の先生にも見せてて、すぐ私に「これは作ったのか?」
と聞いて、そうだと言うとすごいおどろいていて、あとP.Eの先生用にとくべつに
用意した着物メモ帳もすごく喜んでくれた。私もあげたかいがあってすっごく
うれしかった。
 そのあと友達も私のプレゼントをあけてみて喜んでくれた。それから『メリー
クリスマス』と言ってだきあった!こんなことしたのは初めて。なんか今までより
もっと親しい友達になれた気がしてすごくうれしかった。」



【12月22日】ぜいたく
 「その後もずっと車の中で外の景色をボーっと見ていた。アメリカは広い牧場とか、
すごくてすんごい広くて、向こうの地平線が見えるとことかあってすごいなぁ。しかも
そこにひろび〜ろと牛なんか住んじゃって・・・。アメリカの牛はなんかもうひろび〜ろ
と私よりもぜいたくな暮らししちゃってやぁね〜〜。」



【1月14日】歯の痛み
 「このポスターコンテストはすっごい大きな地域でやっているコンテストで、カリフォ
ルニア州とユタ州全体の中で私は1位になったらしい! カリフォルニア州とユタ州と
いったらすごい人だよ。その中で1位なんてびっくりー! ちなみに、賞金$100.00も
もらえんだってー!うれしー!! ・・・でも100%うれしいわけじゃないよ。
なんてったって私は歯の痛みというものがあるし、もしかして歯そうのうろうといって
こわーい歯ぐきの病気かもしれないから。 聞いたときから10分くらいは、はねたり
とんだりの幸せものだったけど、それからあとは、歯そうのうろうだったらどーしよう
・・・。歯がいたーい。死にそう。というわけで、うれしさ20%、痛さ80%になって
しまった。うー痛い。
 ・・・それから夕食を食べてお風呂へ入った。それからはもう歯の痛み100%に
なってしまってポスターコンテスト1位なんてどーでもよくなった。」



【1月20日】勉強
 「ちなみに私は今日、起きたときからのどが痛くて頭も痛くてずーっと治らなくて
勉強の途中少しベッドで横になったんだけど、頭が痛いからって寝てたら休みは
そんなないし、日本を愛するなら日本の勉強もできなくちゃだめだしファイト!
でまた勉強した。休み休みだったけど今日はよく勉強をしたと自分でも思う。
今日、1日勉強してけっこう進んだし、来週の休みはおでかけするか休みたいなぁ、
できれば。米田さんも言っていたけど、たしかに2ヵ国語の勉強をどちらも遅れない
ようにってやるのはムズカシイし疲れるよ。でもやらなきゃ後がこまーる。
でも今では少しアメリカの勉強の方が気合入ってたので、もう半年で帰るんだし、
日本の勉強もがんばらなくては。帰ってからは勉強はほどほどにして、1年間分
あいてしまった部活もとりもどしたいし、友達ともたくさん遊びたいから、今は疲れる
けどガンバガンバ !!」



【1月26日】まるで私そっくり
 「それから久しぶりに『アメリカ高校留学ガイド』という本を読んだ。その本とは
私がアメリカの学校に行く前に「アメリカの10才〜20才までの子はやりにくくて
いじわる!」というのを読んでこわくなった本。なんとなくまた読んでみたくなって
読んでみた。そしたらまるで私のようなことが書いてあった。そのこととは
<<<<<あるアメリカへきた高校の留学生が留学してから毎日日本へ帰りたくて
日本へ電話をした。その子は日本ではとても明るかったのにアメリカへきたら
まるで自分が変身したかのようにしゃべらず、静かになってしまった。そして
その子の部屋にかざってあるものといえば日本の友達の写真と×印のついた
大きなカレンダー。その×印とはあと何日で日本に帰れるか毎日チェックしている
印だそうだ。わかるよなぁーそういうのって。まるで私そっくりだ。私と同じ思いを
している仲間がいたのはうれしいけど、なんかいいことじゃないよねぇ。でも
ぜったいなるよねぇ。そういうふうに。私なんかはもう、同じだーわかるわかる!
という気持ちで読んでいた。」
.


【2月28日】日本
 「今日の1時間目は、はじめに本を読んだ、国の紹介で、フィンランドと日本と
メキシコとインドとアフリカの紹介がのってる本を読んだんだけど、日本の紹介は
家といえば屋根がかわらで松の木があって、ひろえんがあってしょうじにちゃぶだい。
出ている人はといえば七三わけのブラウスを着たへんな男の子。日本といえば
いっつもそんな紹介しかのってない。いつの時代の紹介ですか? って感じ。今の
日本はぜんぜんちがうのに、こういう紹介しかないからアメリカ人とかからみたら
日本てちょーしぶい。もっと今の日本を紹介してくれよう!」


【4月28日】居眠り
 「HEALTHのクラスに入るとまるで催眠術にかかったようにねむくなって、そして
いつのまにか寝てしまう。最近HEALTHの時間で寝ないときなんてないくらいだ。
今までだってボケボケしてて成績はこのクラスだけCだったのに今度はFに
なっちゃうかも。しかも今までは深い眠りに入ってしまっても自分でふと目覚めるか、
クリスティーナが起こす程度だったんだけれど、今日はなんと先生に起こされて
しまった。ぐあいが悪いのか?ってはじめ聞かれたんだけど、ぐあいが悪いわけじゃ
ないからぐあいが悪いとも言えないし、寝てたなんてとんでもなく言えないので
ひとまずぐあいが悪いのではない、ということにしておいた(ぐあいが悪くないんなら
結局寝てたってことになっちまうけど)。今日は先生に起こされた分だけばっちり
目がさめてその後はきちんと作業をやった。」





【5月26日】記念日
 
「ついでにいうなら今日はメモリアルデーで、戦争で死んだ人をいたむ日で、
みんなおとなりのうちとかもアメリカの国旗をだしてたし、国旗を半分に下げたり
するんだよね。アメリカ人はえらいよなぁ。ちゃんと意味のある休日のときは
きちんとそうやって記念の日を大事にするもんね。日本だと休日っていったら
もう休みだっていうだけでうれしくってゴロゴロすごすだけだもん。まぁアメリカ人の
中にもそういう人だっているんだろうけどさ。」



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